耐食ステンレス鋼製締結用部品の機械的性質(JIS-B-1054/ISO-3506-1)

適応範囲(温度範囲/材料選定)

①この規格は、10℃~35の環境温度試験範囲で試験したときの、オーステナイト系、マルテンサイト系及びフェライト系耐食ステンレス鋼製ボルト、小ねじ及び植込みボルトの機械的性質について規定しております

1.ねじの呼び径dが39mm以下のもの
2.JIS-B-0205-1による一般用メートルねじで、ねじの呼び径とピッチとの組み合わせがJIS-B-0205-2及びJIS-B-0205-3によるもの

注1)この規格は、溶接性能などの特殊な性質が要求されるボルト、小ねじ及び植込みボルトには適用しない。
注2)強度区分に関する機械的性質の要求事項を全て満たされている場合には、この規格の鋼種区分及び強度区分の表し方の体系は、この規格で規定する範囲外の寸法(例えばd>39mm)に対しても適用することができる

1 強度区分の表し方、表示及び仕上げについて

1-1 強度区分の表し方

ステンレス鋼製おねじ部品(ボルト)の材料は鋼種区分及び機械的性質の強度区分に対する表し方の体系を図1に示す。 
ステンレス鋼製おねじ部品(ボルト)に対する強度区分の表し方は、ハイフン(ー)によって分けた二つのブロックから構成し、第一ブロックは材料の鋼種区分 (例)A2-70.A4-80

第二ブロックは製品の機械的性質の強度区分を表す A4-70
鋼種区分(第一ブロック)の表し方は次による。

- A:オーステナイト系ステンレス鋼
- C:マルテンサイト系ステンレス鋼
- F:フェライト系ステンレス鋼

これらは、鋼種分類を示し、鋼種に含まれる化学成分の範囲を1桁の数字にて表す
強度区分(第二ブロック)は下記によっておねじ部品のい引張強さの1/10の数値で示される2桁又は3桁の数字で表す。

例1 A2-70:冷間加工引張強さの最小値700MPaのオーステナイト系ステンレス鋼
例2 C4-70:焼入れ焼戻しされた引張強さの最小値が700MPaのマルテンサイト系ステンレス鋼

1-2 表示について

この規格の仕様によって製造したおねじ(ボルト類)には上記の強度区分の表し方を適用し、可能ならば1-4の規定によって表示を施さなければならない。ただし強度区分の表し方及び1-4による表示は、この規格の全ての要求事項を満たす場合だけに適用する事

1-3   製造業者の認識番号

製造業者の認識番号の表示は、強度区分の記号を表示する全てのおねじ部品に対して、製造工程中に施さなければならない。強度区分の表示を施さないおねじ部品でも、製造業者の識別記号の表示を施すのが望ましい。 

1-4   ボルト及び小ねじ

呼び径d(太さ)が5mm以上の全ての六角ボルト(フランジ付きを含む)六角穴付ボルト及びへクサロビュラ付きボルトには上記の鋼種区分設定を適用し図2及び図3に示すように明瞭に表示を施さなければならない。
表示は必須であり、鋼種区分及び強度区分を含まなければならない。

2 ステンレス鋼の鋼種区分-科学成分

鋼種分類鋼種区分化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %
化学成  
質量分率 %



C(炭素)Si(ケイ素)Mn(マンガン)P(リン)S(硫黄)Cr(クロム)Mo(モリブデン)Ni(ニッケル)Cu(銅)

オーステナイト系

A10.1216.50.20.15~0.3516~190.75~101.75~2.25


A2(SUS304番号)
0.10120.050.0315~20-(e)8~194

A30.08120.0450.0317~19-(e)
9~121

A4(SUS316番号)
0.08120.0450.0316~18.52~310~154

A5
0.08120.0450.0316~18.52~310.5~141
マルテンサイト系C10.09~0.15110.050.0311.5~14-1-

C3
0.17~025110.050.0316~18-1.5~2.5-

C40.08~0.15110.060.15~0.3512~140.61-
フェライト系F10.12110.040.0315~18-(j)1-


3 オーステナイト系の鋼種区分

注 a) ねじの呼びにピッチが示されていないものは、基本並目ねじにて対象となります                                                                                 
鋼種分類鋼種区分強度区分引張強さ 最小 MPa永久伸び 0.2%耐力 最小 MPa破断後の伸び 最小 mm
オーステナイト系A1~A550
5002100.6d
オーステナイト系
A1~A5
70
7004500.4d
オーステナイト系
A1~A5
80
8006000.3d
注)引張応力は、有効断面積を用いて計算する(附属書A参照)

3 マルテンサイト系及びフェライト系の鋼種区分

鋼種分類鋼種区分強度区分引張強さ 最小 MPa永久伸び 0.2%耐力 最小 MPa破断後の伸び 最小 mm硬さ(HBW)
硬さ(HRC)硬さ(HV)
マルテンサイト系C150
5002100.2d147~209-
155~220
マルテンサイト系

70
7004100.2d209~31416~34220~330
マルテンサイト系

11011008200.2d-36~45350~440
マルテンサイト系
C3808006400.2d228~32321~35240~340

C4505002500.2d147~209-155~220


707004100.2d209~31416~34220~330
フェライト系F1454502500.2d128~209-135~220


606004100.2d171~271-180~285

4 オーステナイト系鋼種区分のボルト及び小ねじの最小破壊トルク

ねじの呼び最小破壊トルク Nm最小破壊トルク Nm
最小破壊トルク Nm

507080
M1.60.15
0.20.24
M2
0.3
0.4
0.48
M2.50.6
0.9
0.96
M31.1
1.6
1.8
M42.7
3.8
4.3
M55.5
7.8
8.8
M69.3
13
15
M823
32
37
M1046
65
74
M1280
110
130
M16210
290
330